遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

丘の上の神社の想い出

私は小さい頃、近所の悪ガキと一緒に、小高い丘の上によく虫捕りに行った。

丘の上で飲む湧き水は、いつも美味かった。後年、黒部峡谷の有名な湧き水を飲んだことがあるが、味は負けていないと思った。
丘のはずれにマタギの家があり、いつも動物の毛皮が乾してあった。そこから少し離れた場所に、神社があった。

神社の境内はいつも薄暗く、荒れ放題で人がいる気配はまったくなかった。

社殿は、雨漏り寸前で、中は、ほこりだらけで、壊れかけたお賽銭箱を社殿の中に見つけた。
ただ、神社境内にある、狛犬だけはしっかりと2基あり、いつお化け屋敷にされてもおかしくない状態だったが、この2基の狛犬がなんとか社殿を護っていたように思えた。

それから数十年が経過し、虫の知らせというか、墓参りついでに神社に立ち寄ってみた。

境内は、なんと数倍に広がり、桜の苗木が植えられ、整備された駐車場があり、境内を掃除している人がいた。丘の上から北と東に真っ直ぐに道路が続いていた。丘の上からの眺めは素晴らしかった。この神社はこの地区の要所に位置していたのだ。時代は変わっても鎮守の杜だったのだ。

鷹栖神社.jpg

社殿は昔よりも大きいものが新築され、境内の塀が寄付によって新設され、昔の社殿があったあたりに小さな建物とその両脇にあの2基の古い狛犬を見つけた。

近隣に、真新しい住宅や老人ホームが立ち並び、境内で宮司が生活し、七五三の受付やお守りの販売を行っていた。晴れ着を着た娘さんとそのご家族が七五三のお祝いのために訪れ受付していた。

人気ない、荒れ放題の当時を知る私にとっては、信じられない光景を見、別世界に来たような感じだった。

私は、真新しい社殿に続き、かつてあった古い社殿跡の祠に参拝し、家路についた。