遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

数十年ぶりに神社に参拝したこと

私は、神社に参拝することは滅多になかったが、あの日だけは違った。

高校の卒業式の日、あの人にそっと別れを告げた後、
虫の知らせのようなものがあり、促されるように
街中から離れた丘の上にある神社に歩いて参拝した。
途中、あの人の家の横を通り過ぎ、橋を渡り、30分くらい歩いて神社に辿り着いた。

私が願ったのは、ただ1つ、その後の人生の安寧だった。

それから、いつものようにバスに乗り、家に着いた。
家に着くと、電話が鳴ったので電話に出ると、電話の向こうですすり泣いている雰囲気だった。
あの人だとわかってはいたが、私は言い出せなかった。

電話はそのまま切れた。

それから数十年ぶりにその神社を訪問した。

私は、あの日以降なんとか無事に過ごしていることに感謝し、参拝を終えた。

参拝を終え、境内を振り返ると境内の木が一回り大きく成長していた。
そして、あの時に見た光景が、一瞬、鮮やかに甦った。