遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

詩人キーツの想い出

ロンドンに滞在した時期、約1ヵ月間キーツが住んでいた場所付近に間借りしたことがあった。 場所は、地下鉄 Northern Line のハムステッド駅から徒歩15分くらいの、ハムステッドヒースと言われる大きな公園のはずれにある。 https://www.google.com/maps/…

ある天才詩人のこと

将棋の世界では、高校生の天才棋士が頂点を目指す勢いにある。 詩壇の世界では、同じことが半世紀前に起きていた。 少年時代、たまたま読んだ、現代詩手帖という雑誌で感銘を受けた、詩人がいた。ペンネームは帷子耀(かたびらあき)。 たまたま修学旅行の時…

詩の原点

たまたま立ち寄った古書店で、「現代詩手帖」の半世紀前のバックナンバーを見つけた。どれも一冊100円。30冊くらいあった。中にボロボロのものもあったが、かつて書店で手に取ったことなど、懐かしさで胸がいっぱいになり、有難く購入した。 これらの5…

青春の想い出 詩の雑誌との出会い

青春はいつから始まったか。人それぞれのこととなるが、私の場合は、現代詩手帖という雑誌と出会った時期と重なる。特別に好きな女の子に、正確な言葉で想いを伝えたいと思ったことが、詩の世界に関心を持つ動機となった。 初めて、現代詩手帖を購入したのは…

夏の少女 想い出

今年の夏がもうすぐ終わる 私が少年でないようにあなたも少女ではない 私が人生の過半を生きたようにあなたにも残された時間はそんなにない 私があなたに告げたいことがあるようにあなたにも私に知らせておきたいことがあるはずだ 運命に導かれるように私た…

いつか 花は咲く

あることを念じ人知れず花を植えることにした 叶ったこと叶わなかったこと 楽しかったこと記憶に残ったこと 悲しかったこと想い出したくないこと いろいろある 花を植えながら出会わなかったよりも出会えたことが今は大切なことと思うようになった Nat King …

詩作に必要なツール

普段あまり使わないが、あれば使いたいツールがある。 それは、現代語と古語を一覧で参照できる類語辞典である。 短歌や俳句の世界では、作句にあたり類語辞典を所蔵し参照することが、ノウハウ上の常識となっている。作詞家などは、五七五にこだわる場合、…

立原道造詩集 「溢れひたす闇に」

立原道造の詩集の中から、見落としていた名詩を見つけた。 ◇◇◇ http://chuya-ism.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-ac1c.html 立原道造「暁と夕の詩」 Ⅶ 溢れひたす闇に 美しいものになら ほほゑむがよい 涙よ いつまでも かわかずにあれ 陽は 大きな景…

ある真冬の出来事

登校時にあなたを見つけたのは、小雪が舞う寒い冬の日だった あなたは、学生鞄を右手に持ち コバルトブルーのコートを着小首をかしげるように歩き 合流地点でチラっと私の方を見 歩道を横断した そんな姿を私は三年間追いかけた。 あなたの想いに応えられな…

二種類の詩

俳句の本で読んで覚えていることですがすべてを書き過ぎないたとえ募る想いであったとしても寸止めすることが詩作のコツだと思っております 本当は告白するつもりですべてを書きたいしかし、詩作上のテクニックとしてそうはならない 従って、詩は二種類存在…

「春よ、来い」  いつか送り届けたいもの

松任谷由美の「春よ、来い」という歌。 どんな歌なのか、深く考えたことがなかった。 最近になって、YOUTUBEで見て初めてどんな曲なのか詳細を知った。簡単な言葉を使っているものの、季節感とダブらせた心情描写は見事。詩としての完成度も高い。 春よ、来…

放浪の夢

勉学に明け暮れた高校時代最も気に入ったキーワードは「放浪の夢」だった 時間を気にすることなくその日の気分に従いあてもなく歩く それ以上のことは思いつかなかった そのちっぽけな夢はその後どうなったか 普通は二度と思い出すことはない 流行り病みたい…

詩集を読んだ想い出

詩集を読んだ想い出 それは誰にでもあることで私にも起こるべくして起きた 生まれて初めての挫折を味わい私は戸惑った 唯一、自分にできたことそれは時が過ぎるのを待ち時が来るまでの間詩集を読むことだった あるときは図書館あるときは喫茶店で詩集を読ん…

嵯峨信之  小さな灯

私の好きな詩人、嵯峨信之の詩を一つ紹介させていただく。 「小さな灯」という詩である。 一人一人の人生は出会いの中で育まれ、向かい合い肩を並べて歩んでいるように見えてもいずれは離れ離れとなり遠い光になって、消えていく 嵯峨信之得意のモチーフであ…

幸福の糸を紡ぐ人

好きになった人が結婚相手にふさわしいかふと考えることがあった。私は、何人かの女性を好きにはなったものの結婚してうまくいくと思えた人は僅かだった。その理由の大半が自分にあった。ちょっとしたことなのだが、無理して乗り越えるのがある女性とのこと…

春の日の午後の想い出

ある春の日の午後百メールほど先を歩いていた人に遠い昔に見たシルエットを見つけた私は、その姿を追いかけたその人は信号機の所で左に曲がりかなりの速足で駅に向かった駅の区画に入ったところでゆったりした歩きぶりに変わった後ろ姿上半身の姿勢腕の振り…

登下校の想い出

初冬のある日あの通りを歩いたその通りは幼いときは母に手を引かれ歩んだ道だった高校時代になってその通りを歩きなぜか気持ちの安らぎを覚えたのはそのせいだったその通りを過ぎたところ、右手信号の向こう側に警察署が見えた左には税務署があった遥か数十…

霧の中 ヘルマン・ヘッセ

学生時代、図書館で何気なく読んだ詩集の中で、はっとした詩を一つ紹介させていただく。夜明け前、誰もいない霧の中を山の中、霧で視界が遮られている中を歩いている時にふと想い出す、詩である。不思議だ。霧の中の野道を歩くことは生きるとは、かように孤…

沖縄の新星詩人 『平和の詞』"みるく世がやゆら"

平成27年6月23日 沖縄 慰霊の日 『平和の詞』"みるく世がやゆら" https://www.youtube.com/watch?v=xSpU5Nq0OpQコメント欄の政治的コメントに惑わされる必要はありません

ふるさとの冬景色

ある晴れた朝私は、雪景色に染まった遠い山並みを眺めた山並みは昔のままだった丘も川面も昔のままだったあたり一帯は魔法にかかったように時が進むのをやめたようだった私にとってダイヤモンドダストも氷菓のように舞った雪もしもやけ気味の掌で融けた雪の…

母と子の絆  三好達治 乳母車

母の命日にふさわしい詩を一つ選んだ。三好達治の名詩に「乳母車」がある。この詩は、紫陽花、並樹、風、渡り鳥という自然素材を用い記憶の世界にある乳母車の視覚的イメージを最初に提示している。これらの素材をセットした状態で泣きぬれる夕陽つめたき額…

甃のうへ 三好達治

三好達治の詩には、他の詩人にない、写真のような鮮明な心象風景がある。言葉と凝縮した一瞬が微妙にマッチした、幻想世界でもある。たとえば、「甃のうへ」(いしのうへ)という詩。散りゆく桜の花びらと少女の一挙一動を重ね合わせ詩の一行それぞれが、京都…

「雪」 三好達治

今週、旭川は氷点下の日があったようだ。と思ったら、今日は雨のようだ。http://www.stv.ne.jp/webcam/asahikawa/index.html旭川では、寒い冬の夜、雪は音をたてず、しんしんと降り積もる。他の街ではそうはならない。ビュービューと鳴る風の音が聞こえるの…

「青春」という名詩との出会い 若くあり続けることの意味

テレビCMなどで、往年の名女優、たとえば森光子、由美かおる、最近では十朱幸代が、その全盛期のイメージどおりの姿、雰囲気で出演することを見て思うことがある。彼女たちがそうなら、自分もそうありたい、努力次第でできるかもしれない…………と。自分のこ…

雪景色 雪の華

雪景色 雪の華故郷の街が例年どおり初雪を迎えたことを知ったほどなく根雪となり正月には、故郷の街は雪景色に染まる雪景色には、さまざまの時間がある雪景色が美しかった午後ある悲しい出来事が私とあの人に起きた私には前に進む勇気がなかったあの人はただ…

想いと諦観

私は、4歳のときにあの人に出会った。あの人は、私を見るなり私の手を引き何も語らず身振りだけで一緒に遊んだただ一度遊んだ幼馴染みである。それ以来あの一途な眼差しを忘れたことはない。毎年のように夢に見ては想い出しその後も病院の待合室、街角、英…

古い家のなかで

私は、詩が好きだった。しかし、ある不本意なことがきっかけで、詩を書くことも読むこともやめた。このままでは、自分が壊れそうな気がしたからだ。そんな折、リルケの詩に出会い、詩のかたちを見直した。感情的、感傷的ではなく、理性的かつ視覚的に描く作…

「ミラボー橋」 アポリネール

海外旅行した際、夕方6時頃に、ホテルの部屋にて教会の鐘の音を聞き、ほっとしたことが何度かある。そんな時、窓から教会の伽藍を眺めつつ、堀口大学訳の名詩「ミラボー橋」を思い出す。「日も暮れよ 鐘も鳴れ 月日は流れ わたしは残る」の箇所は、時、悔恨…

虹とひとと 立原道造

暑かった夏が終わり、秋の気配を感じる今日この頃。立原道造の「虹とひとと」という詩を高校時代、FM放送で詩の朗読の番組で知った。夏の終わりに振る雨雨上がりの虹を見つめる二人だが、虹を見つめる、それぞれの見方は異なり詩は別離を暗示している。二…

黄昏に  立原道造

暑苦しかった日々が続いたが、漸く涼しくなった。学生時代、建築家で詩人だった立原道造の「黄昏に」という詩に出会い、自分の境遇と重ね合わせ晩夏の夜道を一人暗唱しながら歩く日が続いた。「すべては徒労だったと告げる光」という言葉に虚しく過ぎ去った…