遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

最後のラブレター part1

40歳の誕生日に3日続けて、さめざめと泣くあの人の夢を見たこと
50歳の誕生日に見た、アルバムの最後の頁が高校の修学旅行の集合写真だったこと

から、私は、あの人に手紙を書くことにした。

あの人が私にとってどういう人だったかを伝えるためにである。

手紙は、生涯の最初の記憶に遡り、走馬燈のように流れ去った日々を回想する内容となった。

最初の記憶は、年末のある日の晩、その年の新米を馬そりで運んでくれた叔父の記憶だった。

農家だった叔父は、その年の新米を届けるために
馬そりに乗って、10キロ離れた我が家にやってきた。

父も母も新米到着以上に、川に架かる橋を渡り遠いところから
馬そりで来れたことにとても驚いていた。
私は馬そりの大きさに圧倒された。
馬そりには灯りがつるされていた。

外は、湿った雪が降り続いていた。
天候は悪化しそうだった。
叔父は、新米の俵を降ろした後、一服もせず帰路を急いだ。

走り去る馬そりはやわらかな光で包まれていた。

叔父は、この世にはいない。

その後、私は
この光景に
夢の中で幾度となく再会し、
その度に
しなやかに手綱を捌きながら去っていく叔父の後ろ姿と
馬そりにつるされた灯りの暖かさを
想い出す。

だから、私の記憶の第一幕は、

走馬燈なのだ。