遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

3月10日は人生の分岐点の日となった

今日は3月10日。卒業式の日だった。
私は、この日のことを人生最大の分岐点だったと思っている。
登校直後、教室に入った後、教室を覗き込んだ幼馴染を見かけた。表情は明るかった。その後、目が合う都度涙顔になり、最後に私の前に立った幼馴染は目に一杯涙をためていた。赤い靴を履いていた。
私は、しばらく距離を置くつもりで、さようならと三度つぶやき、その場を去った。
脳裏には二人の女性がいた。
サラリーマンの娘さん、良家の娘さんがいた。どちらも美貌。どちらも私よりも生真面目。どちらか一人を選べと言われれば、普通は良家の人の方を選ぶ。
しかし、私は、簡単にそんなことはしたくない。自分の流儀ではない。
好きだったサラリーマンの娘さんとは、とにかくうまく行かず、別れを催促する手紙が来たので、催促どおり別れの返事を出した。乗りかえる手続きと条件は整っていても、気持ちの整理がついてこなかった。
そんなに簡単に恋心は電気スイッチのように変更がきかないのだ。
あの人が幼馴染であることもあり、想像以上に真剣であることを知り、悩んだ。
他の女の子なら気にならないことでも、幼馴染と付き合うこと、手を繋ぐだけでもとにかく勇気がいる。
幼馴染とは、互いに幼馴染だったことを知っていて付き合いたいと思っていた。
しかし、幼馴染の方はストレートで情熱的。そして、最初の出会いを知らない。
私は、最適解が見いだせず、卒業式の日に、二人の女性からしばらく遠ざかろうと決断したことが、その後の人生に大きな影響を与える結果となった。
少なくとも、卒業式の日に、たった一度一緒に遊んだ幼馴染であると告げておけば良かった、そうすれば幼馴染を悲しませることにはならなかった。
あの日、あの最後の瞬間に一言も発しなかったことが、自分だけでなく、幼馴染をを不幸にしてしまったことを、後悔している。
ただ、幼馴染は、幼馴染だと知って結婚しようと考えただろうか。
わからない。
それゆえ、あの時はあの時でとても言いにくいことだったのである。
寺井尚子(Naoko Terai)  Ave Maria /Caccini ( Vavilov )
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