遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

コーヒーショップ「ちろる」の想い出

良い喫茶店が次々と閉店していく中で、喫茶「ちろる」は今も残っている。
以前は別の場所にあった。当時は、三浦綾子の小説「氷点」というテレビドラマのシーンに取り上げられ、子供の頃テレビで何度か見かけた、伝説のコーヒーショップ。その後、信金南側の今の場所に移転。
喫茶ちろる外観.jpg
従って、私は、移転後以降の客になる。
先日、用事のついでに、十数年ぶりに「ちろる」に行き、コーヒーを注文した。
意外にも、味の好みを聞かれた。唐突なことで、うまく説明できなかったが、味の微調整が効くようで、私の好みに合ったものが出てきた。
もともと、私はコーヒーが苦手だった。本場のウインナコーヒーを除いて。
高校、大学と、コーヒーよりも紅茶を選んで飲んでいた。
そんな私でも、十数年ぶりで飲んだ、「ちろる」のコーヒーはうまかった。コーヒー本来の味がこういうものなのかという感じ。同時に、前回に飲んだ時の味を想い出した。
その「ちろる」、先代の店主は物書きを趣味としている方で、モダンで心安らぐ店づくりを得意とした。何度か通った際、詩を書いたこともあったほどだ。内装やインテリアはなかなかものだった。経営者が入れ替わるということで、どうなるか心配したが、店の外装、暗めの室内、レンガタイルの壁、ハイバックのソファー、デザイン的に名作モデルのチエア、コーヒーの味は、以前のまま引き継がれている。ソファーの座り心地は先代の方が良かった。今は無駄なものは気がつかないか、置かれない様配慮がなされ、禅や水墨画のイメージに近い。質素なしつらえになっている。メニューは、先代は飲み物中心だったが、今は、ケーキ以外の食べ物が増えた。
喫茶ちろる店内.jpg
行った日は、40歳前後の客が多かった。経営者が世代交代したので客も世代交代したことになる。たまたまかもしれないが、コーナーの一人がけの席にて、医師国家試験対策の勉強をされていた方を見かけた。
以前は音楽なしかジャズピアノかドビッシーかサテイのピアノ曲が似合う店だったが、今はバッハの曲が流れる正統派コーヒーショップとなったようだ。
また用事か、待ち合わせの機会があったら立ち寄ってみたい。そんな雰囲気の店である。