遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

3月10日は卒業式だった。

3月10日は高校の卒業式だった。

私は、この日をもって、
たった一度一緒に遊んだ幼なじみであり、
心から好きだったあの人から
去る決心をした。

私には、あの人は高嶺の花であり、とても釣り合う人だとは思えなかった。
別の恋の傷がまだ癒えず、受験直前でとても何かを切り出す気にはなれなかった。
辛かったが、そうするしかなかった。

しかし、あの人にとっては、私はそうではなかった。
私が、初恋の人だったのだ。

そうとは知らず……………。

私は去るにあたり、
もうあの人に涙を流させてはいけないと、
そして、もっと強い自分になってから出会おうと決心し、
ささやくように「さようなら」を告げて、彼女の前から消えた。

彼女は泣いていた。

私は、うまくいく自信がなかった。
嘘ではない。本当だ。

今年もあの時間になると
彼女の嗚咽がかすかに耳の奥で聞えるような気がする。