遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

彼女とデートしたかったレストラン

もし、もう一度昔に返って、彼女とデートできるなら
あの店にしたいと思っていた店があった。

その店は、高校時代、洋食のコースメニューのレストランだった。
店の名は、有名な水彩絵の具メーカーと同じだった。

外から見える店内はしゃれていて、なんとなくパリ風の店だった。
当時でフルコースの価格帯は、店先の折りたたみの看板の記憶によれば5000円前後だった。

その時代、彼女とその店の前で何度かすれ違った。
その時、私は、何気なくある大学の意匠工学の学科に興味を持っていることを話したのだが、彼女はずっとそのことを覚えていた。

結局、その夢は、かなわなかった。私が別の人生を選択したからだ。

私がしたことは、結局、彼女を悲しませただけだった。

が、それから数十年後、あるきっかけで出張し、昔と同じ名前の店で営業が続けられていたことを発見し、店を何度か訪れた。
店は、アンテイーク家具であふれていた。素晴らしい雰囲気の店だった。

そして、もし、昔に返って彼女とデートするなら、この店にしようと思った。

しかし、その直後、私はある事業のことで躓いた。

それから数カ月、本当に、辛い、失意の日々が続いた。
何もする気が起きなかった。

それから半年後のある日、休暇をとり、この喫茶店の周りを車で通りかかったところ、店が、普段以上に明るく、いつもの3倍くらいの客であふれ、やわらかな光に満ち溢れていた。
が、その日は別の用事があったので、店には立ち寄らなかった。

それから2週間後、その店の前に立ち、私は茫然とした。
店は、2週間前に閉店したとのことだった。