遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

祖母の夢

私と祖母は、一度だけ会い、一度だけ話しかけられた。
たったそれだけの関係だったが、一度だけ祖母の夢を見た。

それは、祖母が亡くなった早朝未明に、起きた。
田舎の農村の広い道を一族と思われる白装束の集団が二列に並んでゆっくり歩いていた。

その直後に、自宅の電話が鳴り、祖母がなくなったことを知らされた。

母は、珍しく、夢を見なかったかと聞いたので、見たままのことを母に伝えた。

実は、母もまったく同じ夢を見たと言った。
家族で、同じ夢を見たのは母と私だけだった。

それから何十年かたち、私は、先祖のことを調べ、祖母の実家の周辺の光景を思い浮かべるうち、当時の嫁入りの風習のことをふと思い出した。

祖母は、今輪の際に、嫁入りした頃を思い出し、嫁として生き、その生涯を終えることを、嫁入り時代の光景で私に伝えたかったのかもしれないと
私は、気がついた。

たった一度会い、たった一度話かけられた祖母だったが、
祖母が遺した夢は、これからも忘れることはないと思う。