若い頃、ある女性に恋していた。
しかし、その女性は、高嶺の花だった。
普通のサラリーマンの奥さんにはふさわしくない人だった。
そこで、私は賭けをした。
志望校に入学できれば、彼女を射止めようと思った。
落ちれば、あきらめようと思った。
結果は、落ちてしまったのであきらめざるをないと思った。
あきらめる前に手紙を書いた。
そして、別の女性に出会い、彼女のことは忘れることにした。
しかし、彼女はそうではなかった。
昔も今も。
彼女はすべてに気づいていたが、私が別の恋に懲りてうまくいく自信がなく言い出せなかっただけだった。
それから30年たち、散歩がてら母校の廻りを歩いているときに、運転席にいた彼女と目があった。
そのとき、初めて彼女は髪を切ったことを知った。