遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

雰囲気が物凄く良かった女の子の想い出

転校してきたばかりの、女の子が近所に住んでいた。苗字は覚えているが名は知らない。
帰りのバスが一緒になり、向かい合わせで座って、同じ停留所で降りた。下車後、彼女はいつも小走りに自宅に向かった。
雰囲気が柔らかく、表情豊かな人だという印象だった。イメージ的には松田聖子のデビュー当時の雰囲気をナチュラルにした感じ。そう美人ではなく、そうセクシーでもなく、あまり知的そうでもない。が、それでいて雰囲気が柔らかく、話しかけやすかった女の子に見えた。滅多に出会えるものではないと思った。
ある時、同級生から交際をすすめられた。
冗談だと思って聞き流していると、同級生は、女の子の家庭のこと、お父さんの趣味のことなど、いろいろ話し出した。家中、鉄道模型で溢れているのだそうだ。私は吹き出してしまった。彼女が世間ずれしていない雰囲気なのは、お父さんの人柄によることは明らかだった。
しかし、どんなに薦められようと、私はまったく気乗りがしなかった。当時はぶりっ子ブームでどんな人なのか、わからなかったためだった。
好きな女の子が別にいて、成績が伸び悩んでいたこともあり、ゆとりはなかった。時々電話をかけてくる女の子と彼女が同じ高校だったこともあり、その女の子のことを無視したくもなかった。
それでも、こうして振り返ってみて、一言も話はしなかったが、良さそうな雰囲気の人だった。
彼女なら、いつか、ふさわしい人との出会いがあり、宝物のように大切にされ、きっと幸せな家庭を築いている。
たぶんそう思うのだ。

サティ: ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)
https://www.youtube.com/watch?v=Q6uKG-Eu-1Y