遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

市議会議員の娘さんのこと

市議会議員の娘さんで小学校同級生の女の子がいた。
名は奈緒美。
この女の子は、非常に気が強いところがあった。
正義感が強すぎ、すぐに平手打ちが飛んでくることなどから、〇〇ババーという、不名誉なあだ名がついてしまった。
容姿的には、美人の部類に入るのだが、挙動の激しさのせいで、誰も美人と気がつかないのである。
彼女のお父さんは、議員になる前は、個人商店を経営していた。
私のような子供にも誠実に対応された方だった。
議員になられてからは、一躍幹事長的ポストに抜擢された実力派議員だった。
おそらく、当時の郷土史のどこかにその名前が残っているはずだ。
そんな市議会議員のところに、親の薦めで就職の相談に行った。
彼女がいれてくれた煎茶を御馳走になった。
普段飲んだことがない、すっきりした味わいのお茶だった。
親は市役所勤務を望んでいた。
が、私は嫌だった。まったく気が進まないのである。
議員からは、こういうルートがある、どうかと言われたが、受験する気にはなれず、別の道に進んだ。
企業内定後、親の薦めで挨拶に伺ったところ
再び彼女がいれてくれた煎茶を御馳走になった。
議員は、地元就職でなかったことにがっかりしていた。
それ以来、お宅を訪れたことはない。彼女と話したこともない。

が、人一倍正義の塊のような彼女のことだから、今頃は、どこかの町内会の防犯部長を務められていることだろう。