遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

絵を習いに来ていた女の子の想い出

小学校の時代、絵を習いに行ったことがある。
中学の美術の先生が自宅併設の研究所を開設、休日になると小学生に教えていた。
先生は、道展会員。一言で言うと、モダンでやや抽象画ぽい雰囲気の油絵画家だった。
パリの冬の湿っぽい雰囲気をうまく表現できていたように思う。
先生の家は、少し離れた住宅地にあり、日曜の朝にバスで通った。
昼頃には戻ってきたように思う。
当時の生徒、一人だけ名前と顔を覚えている女の子がいる。
その女の子は私とは反対の方角から通っていた。
同じ学年ということで、いつも横に座り見比べながら描いた気がする。
女の子らしい絵だったように思う
その女の子と、高校で再開した。
廊下ですれ違った際に気がついたので、当時と同様の雰囲気で目礼したところ
向こうからも挨拶がかえってきた。
そのことを再び確認するように、再び女の子が現れ
向こうから挨拶を求めるようなしぐさをした際に
別の女の子が私の挨拶する様子を確認しようと
少し離れたところで私の挙動を観察していたことを覚えている。
下心とか、恋心からそうした訳ではないのに
女の子たちのしたたかさを見た思いだった。
その後、その女の子と話すことなく、卒業した。
その女の子は、小学生時代の同級生みたいな人である。
後で知ったことだが、その女の子には許嫁がいたそうだ。
たぶん、高校入学前に親同士で決めたことなのだろう。
許嫁が居た人は、他に何人かいた。同級生で夫婦になったのは六つはあったように思う。
中学時代から婚約状態みたいなカップルもいた。
その女の子は、いつも落ち着いて感情をなかなか表に出さない雰囲気だったが
許嫁がいて恋愛自粛したせいかもしれない。
もしかしたら、許嫁が居た人への私からの挨拶は、要らぬ外乱だったのかもしれない。
さて、絵が描き終わる頃、先生はいつもベートーヴェンのロマンス2番のLPをかけた。
曲名は、私が先生に聞き、ずっと覚えていた。が、演奏者を聞くことを失念し後悔していたところ、偶然、YOUTUBEの動画でのバイオリン独奏、オーケストラ演奏を聞くこととなり、ハイフェッツ演奏のものと確信した。
Beethoven: Romance No. 2, Heifetz (1951) ベートーヴェン ロマンス第2番 ハイフェッツ
https://www.youtube.com/watch?v=K4WsVO0Svf8
ハイフェッツの演奏は、奇を衒ったものではなく、気品ある演奏に聞こえる。
自然に安らぐ演奏である。
絵を習いに来ていたその女の子も
ハイフェッツのこの演奏の如く
やや地味ながらも、いかにも育ちの良さそうな聡明な女の子だった。
同窓会などで話する機会がもしあったら、教室でかかっていたベートーヴェンのロマンス第2番のバイオリン演奏者はハイフェッツのもので間違いないか確認したいと思っている。