遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

別れのランチ Part1

同じ職場に、実家が比較的近所の、同期入社の女子社員がいた。
ご家族は皆さん良い人。母はそう言っていた。
彼女は、そこそこ美人。明るくて性格が大変良く、酒が滅法強いことで有名だった。社内恋愛の噂はまったく立たなかった。
私はというと、職場で年齢が近いことを除き、宴席以外で話すことはほとんどなかった。ほぼ二年毎に転勤したので、彼女とは次第に疎遠になった。
ある時、彼女の退職記念品の奉加帳が私の職場に回付、結婚おめでとうと廊下でひやかしたところ、彼女から、取引先の人と結婚が決まり、退職で故郷を離れることとなり、ついては、お昼を一緒に、とのお誘いを受けた。

私は、デパート近くのレストランに案内、食事しながら入社当時を振り返った。驚いたのは、私の中学時代の姿を覚えていたことだった。恥ずかしい気持ちになった。
食事の後、ある品物を、私の目利きで選んでほしいとのことなのでその店に付き合った。
別れ際の彼女は、結婚することを否定していはいないものの精神的にブルーなように見えた。

故郷を離れる前に、彼女は最後の想い出づくりを必要としたのだろう。