遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

失意の時代 才能豊かな女流詩人との出会い

私は、大学時代、恋愛しない主義だった。
クラスやサークルの女の子はまわりにいたが、普通に話するだけだった。
私は、再び同じ失敗をしないため
自分を見つめ直し
自分を鍛え直し
強くなろうとした。

恋愛は、これはという人に出会うまではしないつもりでいた。
遊ぶつもりもなかった。

ただ、そんな無愛想な私でも交際を求められたことが何度かあった。
その中に、後でわかったことだが、才能豊かな女流詩人がいた。

私は、大学図書館で実験のレポートを書き終え、
夕食までの空いた時間、
詩集を読むのが習慣だった。

そんな私に、彼女は何度か話しかけてきた。
しかし、恋愛する気がない、無愛想な私は、彼女の名を知らなかった。
知ろうともしなかった。

だが、ある時、新聞の読者の投稿詩壇のコーナーに掲載された詩を読み、驚いた。

彼女から見た私の姿と
彼女の想いがさりげなく綴られていた。

私は、この詩の作者は間違いなく、彼女であろうと気づいた。
なぜなら、文学部の学生に同じ名の女性がいたからだ。

自分は彼女ほどの才能はないが、その詩を記念にとっている。

詩の書き出しはこうなっている。

━…━…━…━…━…━…━…

あなたは一房の葡萄と林檎を
机に置いていって下さった
わたしの目の前に葡萄と林檎が
かげをつくります

━…━…━…━…━…━…━…

気むずかしい私ではあったが、
この詩に出会ったことがきっかけで、
その後の人生観、恋愛観が大きく変わったことは確かである。