遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

虹とひとと 立原道造

暑かった夏が終わり、秋の気配を感じる今日この頃。
立原道造の「虹とひとと」という詩を
高校時代、FM放送で詩の朗読の番組で知った。

夏の終わりに振る雨
雨上がりの虹を見つめる二人
だが、虹を見つめる、それぞれの見方は異なり
詩は別離を暗示している。

二人の間に何が起きたのか知るべくもないが、

「叢は露の雫にまだ濡れて 蜘蛛の念珠(おじゆず)も光つてゐた
東の空には ゆるやかな虹がかかつてゐた
僕らはだまつて立つてゐた 黙つて!
ああ何もかもあのままだ」

の間は、詩人としての冴えが特に感じられる部分と思う。

 

http://www.aozora.gr.jp/cards/000011/files/889_20333.html

虹とひとと


雨あがりのしづかな風がそよいでゐた あのとき
叢は露の雫にまだ濡れて 蜘蛛の念珠(おじゆず)も光つてゐた
東の空には ゆるやかな虹がかかつてゐた
僕らはだまつて立つてゐた 黙つて!

ああ何もかもあのままだ おまへはそのとき
僕を見上げてゐた 僕には何もすることがなかつたから
(僕はおまへを愛してゐたのに)
(おまへは僕を愛してゐたのに)

また風が吹いてゐる また雲がながれてゐる
明るい青い暑い空に 何のかはりもなかつたやうに
小鳥のうたがひびいてゐる 花のいろがにほつてゐる

おまへの睫毛にも ちひさな虹が憩んでゐることだらう
(しかしおまへはもう僕を愛してゐない
僕はもうおまへを愛してゐない)