展覧会でラファエロの自画像と出会った。
その自画像を見ているうちに、ラファエロとうり二つの人物がいることに気づいた。
それは、「M子」だった。
横顔、鼻筋、唇は、M子そのものだった。
黒光りする黒髪とすらりとした肢体
彼女は、スペインやイタリアの女性のごとく情熱的だった。
彼女は、スペインを第二の故郷のように慕い
スペイン語まで勉強し、自分と似た異性を探し続けていた。
ある時、二人きりで食事し、話をした。
話題が次から次に変わり、
時間があっという間に過ぎていく感じだった。
こんなことは、今までなかった、
彼女に言わせると、
二人とも、雰囲気だけでなく、性格、体型、頭蓋骨の形までそっくりだった。
私も話していて、何から何まで似ているような気がした。
私にとっても彼女にとっても互いが理想の人だった。
しかし、私は、出会った時に既に家庭を持っていたので、
彼女への想いを隠すしかなかった。
彼女が良縁に恵まれることを願い、
彼女の素振りを無視し続けていた。
彼女は、私を励まそうとまでした。
が、時すでに遅く、私の決意は堅かった。
私は、「もう少し早く出会えれば……互いの人生が変わっていたかもしれない」とだけ伝えた。
私は、時計を確認し、あれから、数年経ったことを想い出し、自画像の前を離れた。
たぶん、
この絵に再び出会うことはないだろう。そして、M子とも………