遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

職場で食べた羊羹の想い出

毎年春になると、出入り業者の社長が、決まって虎屋の羊羹を持参、職場の庶務の女性が、羊羹を食べやすい大きさに切り、皿に載せ配った。つまようじで食べた。

 

 

私は、この美味しい羊羹を数回ごちそうになった。

 

聞くところによると、その会社が存続できたお礼に、年老いた社長が、毎年のように持参されるとのことであった。義理堅い人がいるものだと当時思った。

 

数年後
たまたま、会社の要請で別の会社訪問した際、その会社の社長さんからも会社との取引のお蔭で会社存続しているという趣旨でお礼を言われたことがあった。会社というものは自社の努力だけでなく、取引先の存在があって成り立つことを改めて知った。

 

会社都合でいろいろな職場を経験したが、そういう類の話を聴くことはその後はなかった。

 

なお、羊羹を職場内で配った女性は、実家の近所に住んでいた中学の後輩。自分から後輩であると自己紹介されて彼女と同郷であることを初めて知った。お父さんは開業医、医師会のストライキ(「保険医総辞退」のこと)に賛同しなかった正義の医者として近所では知られていた。彼女は、酒が強くいつも陽気な人だった。


取引先の人と結婚することとなり、職場勤務最後の週に、彼女と職場近くのちょっとしたレストランで二人きりで食事し、彼女のためにラケットを選んで別れた。

 

彼女とはそれっきり会ったことはない。