遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

喫茶店の想い出

会社近くのデパート街の仲通りに、その喫茶店はあった。
メニューは、チャーハン、スパゲテイ・ミートソース、中華丼、豚丼など。
食後のコーヒーとセットで700円くらい。
昼休み近くになると、職場を抜け出し、私はその店に何度も通った。
茶店のママさんは、デパートの高級品売り場にいそうなハイカラな雰囲気の人。
味は、一流レストラン並。
客層は、デパートの出入り業者が多かった。
ある時、食べ始めた後に
同じ会社の女性社員が私の後ろの席に
居ることに気がついた。
それから彼女の姿を毎日のように喫茶店で見かけるようになった。
彼女は、着席後、いつも
煙草を美味しそうに吸い
1時近くになるまで
時間ある限り、雑誌をむさぼるように読み
何本も煙草を吸った。
何か事情があり
誰にも邪魔されない空間を
必要としていたようだった。
ある時、喫茶店で一緒だった直後
会社の廊下で彼女と鉢合わせ
初めて驚いた顔をした。
彼女が店の常連客であり
ヘビースモーカーであることも知っていて
何事もなかった素振りで
軽く挨拶、その場を通り過ぎた。
その店はもうない。

ウェイトレス   竹内まりや
ttps://www.youtube.com/watch?v=Y1ROjWNRZnQ