遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

若くして世を去った家具作家のこと

地元の家具作家の一点ものの作品を紹介するパンフレットを眺めているうちに
実物を見ておきたい気になり
電話した後、ある家を訪ねたことがある

その家の玄関先には
飼い犬がいた
私が訪問した時
その犬は
飼い主でない私でもわかるくらい
人懐こそうに駈け
吼えていた

私は
訪問した先で奥さんから
旦那さんであった作家はつい最近亡くなられたとの
思いがけない話を聞かされた

奥さんが言うには
いつもふさぎ込んでいた
その犬が、私が訪問したことで珍しく尻尾を振ったのだそうだ

奥さんは飼い犬に
私は旦那さんが連れてきてくれた
お客さんだよと語り
その犬は尻尾を振って私を送ってくれた

実は私は作品は見ていない
話を聞いただけで十分過ぎるほどだった
たとえ実物の作品は見なくても
作家の意図した世界
が見えたのだ

愛犬が私に伝えたのだ

私は見失っていたものが
何だったのか
自分が大切にすべきものが
何だったのか
その作家に教えられたような気がして
その家を後にした


旭川クラフト
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