私は、OTTAVAというインターネットラジオ放送局を時々聴取している。
この放送局、クラシック音楽専門チャンネルで、無名の演奏家による、胸を打つ音楽が流れる。
CMは、思い出した頃に流れる程度、AMラジオ局のような喧噪はまったくない。
何と言っても、この放送局のいいところは、ゴールデンタイムを除き、大人受けする感覚で語るDJが、かつて数人いたことである。
おすすめは、OTTAVA Animatoである。ゲレン大嶋氏の語り口は、いつも抑制され淡々としている。
この番組で度々流れる局で、私のお気に入りは、
ジョン・ラターの合唱曲、カルロス・カルデルの器楽曲、レジョン・フィールドの夜想曲、レスピーギのピアノ曲、グラナドスのギター曲である。他には、ピアノ、バイオリン、チェロの小品の中に郷愁をそそる名演奏もある。
中でもジョン・フィールドの夜想曲は、特筆すべき傑作ではないかと思う。夜想曲の世界ではショパンのものが有名だが、私は、音楽作品的にはジョン・フィールドの方が夜想曲らしいのではないかと思って聴いている。
それにしても、世の中の評価はわからないものだ。ジョン・フィールドの夜想曲がショパンの夜想曲以上の評価を得るにはあと数百年かかるかもしれない。
実は、このブログで紹介させていただいた、クラシックの名曲は、このOTTAVAの番組にて紹介されたものが多い。
音楽ビジネス的には、音楽雑誌で☆5つマークされるような大御所のものばかり喧伝されるが、もう私的には関心はない。
太陽が東から上り、西に沈む繰り返しの中で私は、呼吸し、こうして音楽を聴いている。
かつて、ヨーロッパ旅行した際、ある街角にて、「馬車よ、ゆっくり走れ」と思ったことがあった。
OTTAVAは、そんな雰囲気と気品溢れる放送局だったが、無名の人の音楽ばかり配信してはビジネス的には成り立たなくなったのであろう。
残念ながら6月末を以て、放送休止するそうである。
6月末まで、残り10日余りとなったが、「あの、やわらかな光に包まれた、ヨーロッパの街角にて、愛する人と佇んだことを思い出し、馬車よゆっくり走れと願う」のは、たぶん私だけではあるまい。