遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

微笑が消えない女の子のこと 校門での想い出

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もう何十年も前の事なのだが
その微笑む笑顔が
いまだに脳裏に焼き付いて離れない女の子がいる。

その女の子は、一学年下の街ん子で
髪がストレートで腰のあたりまで長く
たぶん、記憶している限り
最も長い髪の人だった。

彼女は、入学して5月以降、半年間
毎日、学校の校門前にて
親しげな表情で
いたずらっぽい仕草で立ち
何かを探している風だった。

そのうちに、私は
彼女の目的に気づいた。
誰か気に入った異性の写真を
同級生に頼んで撮影してもらっていたようなのだ。
写真撮影された人はたぶん、数人。
その中に私も入っていた。

私は、彼女のことは嫌いではなかった。
ただ、同時期、夢中になっていた女の子のことで
頭が一杯だったので彼女に関心が向かわなかった。

そうはいっても
毎日のように校門で目が合い
その時期、歯列矯正中だったため、直ぐに記憶に焼き付いてしまった。

彼女は、それから数カ月してから、校門に姿を見せることはなくなった。
時折、見かける姿はなんとなく寂しそうに見えた。

ただ、振り返ってみて
微笑しつつ
校門前で
長い髪をたなびかせ
少しそわそわして
小走りに歩く
彼女の姿は
今も消えない。

当時、それほど
異性として意識した人ではないが
不思議に
その微笑だけは消えることがない。

彼女の微笑が
私の心に無意識に宿ったということなのだろう。