近所の女の子で
決して人を陥れるところがなかったのが「ひとみ」ちゃんである。
いつも鼻水をたらし、ぐずぐずしていた子だったが
年頃になると見違えるようにかわいらしくなった。
頭もそこそこ良く、勉強すればできた子なのだろうが
姉と同じ轍は踏むまいと決めていたせいか
のんびりと高校生活を過ごし
東京の私立大学に進学した。
近所の女の子の中では一番まともみ見えたが
ある事情により深入りすることだけは避けた。
ただ、結婚相手は
彼女のように
裏表なく
かわいらしく
穏やかな人にしようと
子供心に決めたくらいである。
それ以来
その名は
特別な「名前」となってしまった。