本当は電話するのは間違っていることは十分承知しているつもりだが、
思い余って電話したことがあった。
それは正月明けだった。
正月に同窓会があり、帰省した。翌日、市街をドライブしたついでに彼女を一目見ようとある場所に立ち寄った。
なぜかどうしようも会いたくなったからだ。
数日後、仕事のことで立ち寄った場所で、親子連れで歩いているあの人を見つけた。
髪は長いままだった。ミンクのコートを着て、手には小さなショートケーキの箱を持っていた。
昔のままだった。ほっとした。今も独身のようだった。
その翌日、彼女の夢を見た。
そして、私は、翌日、彼女に電話する決心をした。
本当は間違っていることは十分承知していたが、思い留まる術はなかった。
翌日、彼女にある要件で電話した。
最初はとぼけていたが、私だとわかると大声で絶叫した。
それだけで十分だった。
いろいろ話をしたが、すべてが予想と逆だった。
心臓がはちきれそうな気がした。
一途で愛情細やかで思いやりあふれる大人だったのだ!