私にとって忘れられない洋館がある。
幼少期、母が、洋裁、和裁を習いに行き、その発表会で連れて行かれた洋館である。その洋館の天井は3メートルくらいで、冬は寒く、スリッパなしでは歩けなかった。実は、夏、ここまで歩くのがいやでいやで、洋館の入り口にある塀のツタにぶら下がって歩いたことを今も覚えている。
実は、右端のツタは昔は、この建物の正面左側の塀にも張り巡らせてあったのだ。
そして、高校時代、この道は下校途中の散歩道となり、その後の人生において、この建物が昔も今もここにあり続けることが、一種の精神安定剤になっている。
だから、生きている間は、ずっとそのままでいてほしいのだ。
そして、記憶は、学問やビジネスのためだけでは決してないのだ。