遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

国語教師の想い出

私は、その教師の教壇での姿を見たことはない。
ただ、住所などから、あるバス停でのバスの乗降に際して、たぶん、その方だろうと覚えていたことがある。

その方は、背が高く、ご高齢で目が不自由で、バスの乗降にかなり時間がかかっていた、ことで覚えていたのである。

もしそうでなかったにせよ、「旭川九十年の百人」に載っている写真から、どこかで見かけた方ではないかと思うのだ。

たぶんその方だと思うのだ。

その方とは、国語教師であり、退職後は郷土史に打ち込まれた方である。
郷土の人物伝として纏められた、「旭川の人びと」 (1971年) (旭川叢書〈第5巻〉)は、これから郷土史を書こうとする人のネタ本になっているようだ。

そういう経緯がある関係で、当時は有名人だった方なのである。

名は、村上久吉。

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また、国語、漢文の専門家として、「字原を探る」、「漢詩評釈と詩話」などを遺している。

「字原を探る」は漢字のルーツについての研究結果をまとめた面白い本である。古書価格は低迷しているが、著者が出版記念にあちこちに配布したことで古書店に溢れている関係でそうなっている、との話を古書店主から聞いたことがある。
漢詩評釈と詩話」は、詩吟好きの人であれば、読みたくなるような箇所がある。少なくとも、漢文の参考書よりは面白い、という印象を持った。

話は変わるが、石井菊次郎という明治・大正時代の名外交官が書いた文章は、漢詩調である。乃木希典大将も漢詩を得意としていた軍人として知られている。あの良寛もそうだった。

私は、当時、漢文を大の苦手としていた。受験テクニックの対象として扱っていたのが原因と、反省しているものの、当時の教科書で、石井菊次郎の外交成果の凄さ、乃木希典良寛の生きざま、人柄について取り上げていたら、漢文についてもっと関心を持って学んでいたであろうと、今は思っている。

それにしても、この年になって漢詩に興味を持つことは、学生時代、無関心過ぎたが故の因果応報としか言いようがない。