遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

5条通りの民家の想い出

昭和40年代初期に建築されたと思われる、築50年の民家が売りに出されたことを知った。
場所は5条通り南面。高校時代から、この民家のことを覚えていた。

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間取りは、総二階。当時の住宅としては、しゃれたデザインだが、首都圏には、この手のデザインをたくさん見かける。
コンパクトながらも、しっかりした造り、デザイン的にもモダンだった。雰囲気も良かった。文化住宅の範疇に入るのだろう。

私は、当時から、家を建てるなら、こういうデザインにしようと秘かに決めていた。
想像するに、家主の方は90歳前後、職業的には、かなりのインテリ層ではないかと思われる。

家は、建てた人の分身みたいなものだと、私は思っている。
いい加減な人はいい加減な家を建て、真面目で知恵ある人は、知恵を働かせ、デザインと機能をうまく融合させた家を建てる。
だから、私も家のデザインには、少々こだわり、ハウスメーカーの基本デザインを最大限活かした、設計となることを目指したつもりである。

最近、出生地近くで、リフォームした、インテリアビジネス系の方の家はまさにそうだった。
建てた当時も、リフォーム直後の現在も、その辺の注文住宅以上に、すべてにおいて配慮が行き届いている、ことは、何度も見ていれば、気がつく人なら気がつく、ことではある。
家は、知恵の産物みたいなものなのだ。

5条通りには、古い家が多い。
この家が建てられた時期、木造家屋はどんどん消滅していき、この家のような建物に建て替えられていったが、その中でもこの家は、いつ見てもすっきりしたものだった。

デザイン的価値はないかもしれない、当時としてはありふれた建物の一つかもしれないが、この家が私のイメージの中で多大なインスピレーションをもたらした点において、この家は、デザイン的にも機能的にも一流品だと思っている。

それにしても、見覚えのある建物がこうして消滅していくことは、記憶が消滅するような気がして、寂しい限りである。