遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

ある夏の記憶

私の故郷であの人は
今も昔と変わらない場所で生活している。

ある夏の日
あの人は、車庫を開け、車を車庫から出し、
年老いた母親と買い物に出かけたのを
偶然見た。

車庫の扉を開ける若い娘さんのようなしぐさ
母親と語らう優雅な後ろ姿
ゆったりとした運転マナー
から
私は、あの人のことをやっと理解できたような気がした。

すべては遅すぎたかもしれない。
出るはずもない結論の話をしてもどうにもならないことはわかっている
つもりだが、
あの人が生きている限り、
見守れるなら
いつまでも見守りたいと思っている。