あの人は、たった一度遊んだ幼なじみだった。
あの人が私の手をとり、一緒に遊んだのだ。
嘘ではない。本当なのだ。
そして、商品の上ではしゃいでいるところを見つかり
あの人の父から厳しく叱られたので
私もあの人も互いの目をしっかり見るしかなかったのだった。
見つめあっていたと言った方がいいかもしれない。
だから、
私は「あの目」は決して忘れないのだ。
あの人も忘れるはずはないのだ。
その後、
病院の待合室や
英会話学校で
同じ目をした女の子がいたことを私は今も覚えている。
そして、高校入学直後、
廊下ですれ違う彼女の目を見て
私は、あの幼なじみの目にそっくりだったことに気がついた。
彼女の目は、大きくはないが、形が整った、かわいらしいうさぎのような赤みがかった目だった。
その晩、渡された同級生名簿の中に、彼女の名があったことを確認した。
しかし、私は、そのことを彼女に話すことができなかった。