遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

2月24日に起きたこと

もう何年も前のこととなるが、2月24日に起きたことは昨日のことのようにはっきり覚えている。
今年は、豪雪かつ寒波厳しい年であるが、東京の私大を受験した年は違った。
その一週間の東京、朝方はミルク色の空で湿っぽいのだが、日中は桜が咲きそうなくらい穏やかで風のない一週間が続いた。
テレビは、連日、地方から来る受験者のために、交通機関の遅延の有無を正確に報道していた。
あの報道には本当に助けられた。
アナウンサーに励まされている気になった。
2月24日は、東京で最初に受験した有名私大の合格発表日だった。
私の受験番号は、申込が早かったこともあり、二ケタ台。
畳数枚のベニヤ板に貼り出された、合格者番号リストのなんと右端の上、それもトップに私の番号があった。
他に国立大学複数試験を予定していたが、私はこの日を以て、長く苦しかった受験時代が終わった。
私は、一週間で三校受験し、いずれも合格した。
自分にしては出来過ぎだった。
その三日間は、解答用紙に向かう自分が普段と違い、頭が冴え、冷静だった。知り合いがいない受験会場で、休み時間にしたことは、チョコレートを食べ、鉛筆を丁寧に削り、消しゴムの使いごこちを確認することだった。
受験会場から出てくる途中で、受験者の父兄と思われる方々が、受験生一同を拍手で迎えてくれたこともあり、自分の子供以外への思いやりある父兄がいたことを知り、この日を以て殺伐とした試験至上主義を棄て、目先の利益に捕らわれず学問、仕事に向かう生き方に切り替えることにした。
三校受験した際にあった、いろいろな出来事から、その後の生き方を変えるほどの衝撃を受けたことを、振り返って思い出すのである。