遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

写真屋の想い出

その写真屋は、当時、銀座通り商店街の一角にあった。今も同じ場所にある。

銀座通り.jpg

用事で通りがかったついでに昔の事をふと思い出した。

ある夏の日、私は、母から店主が同級生の、写真屋がいることを聞かされ、母の紹介で受験用の写真を撮りにこの店に通った。
店主は、なかなかにスタイルが良く、おしゃれで良く気がつくスマートな人だった。撮影する時の仕草、言葉が、父親があたかも自分の息子にするような感じだったので、一瞬、店主の眼をまじまじと、みてしまったことを記憶している。

写真を受け取りに行った時、自分の写真が普段よりもきりっとした良い男の写真だったので、この店主が少し細工したのだろうと思ったが、何も言わず、有り難く頂戴した。
そして、店主の写真のおかげもあって、たくさん受けた滑り止めに合格し、私は、晴れてその中の一校に進学することとなった。

母は、その写真屋についてはそれ以降、何も言わなかったが、顔立ち、容姿、雰囲気などから、私は、たぶん親戚の人ではないかと思っている。

あれから、数十年がたち、再び、この写真屋の前に立ってみると、それなりの頻度で、車に乗った客が訪れている。
今も繁盛しているようだ。
店先には、当時よりも、幸せそうな家族写真のサンプルがずらりと並んでいるようで、代替わりしても先代の優しい心遣いが、この店には生き続けていることを確認し、ほっと深呼吸して私はその場を離れた。