遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

嵯峨信之  小さな灯

私の好きな詩人、嵯峨信之の詩を一つ紹介させていただく。
「小さな灯」という詩である。
一人一人の人生は
出会いの中で育まれ、向かい合い
肩を並べて歩んでいるように見えても
いずれは
離れ離れとなり
遠い光になって、消えていく
嵯峨信之得意のモチーフである。
人生は孤独に始まり孤独に終わる
そんな孤独の輪廻を描いている

が、その一つ一つの孤独にも
ぬくもりや微笑みの痕跡がある
と詩人は言いたいのであろう。
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小さな灯

人間というものは
なにか過ぎさつていくものではないか
対いあつていても
刻々に離れていることが感じられる
眼をつむると
遠い星のひかりのようになつかしい
その言葉も その微笑も
なぜかはるかな彼方からくる
二人は肩をならべて歩いている
だが明日はもうどちらかがこの世にいない
だれもかれも孤独のなかから出てきて
ひと知れず孤独のなかへ帰ってゆく
また一つ小さな灯が消えた
それをいま誰も知らない