遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

小学校の正面にあった文房具店の想い出

私が6年間通った小学校の正面、道路を挟んだ市場のはずれに、その文房具店はあった。
その文房具店、実は駄菓子屋を兼ねていた。

店の客は、ほぼ100%小学生。大人が来る店ではない。
そして、儲かるような店でもない、
私が行く登下校時間帯、いつも小学生は数人居たような店である。

その店の店主の老夫婦、夫婦ともに年齢は75歳くらい、白髪交じり、おじいさんは背が高く、おばあさんはやや小太り、実に穏やかで温かな雰囲気の老夫婦だった。

今になって思えば、昔話の駄菓子屋みたいな感じだった。

おじいさんもおばあさんもとてもいい人だった。当時を懐かしむコメントを掲示板で読んだこともある。


店舗は、平屋の木造。建物面積はは20坪くらい。
店舗部分の面積は、4畳半くらい。レジは店の中央奥。店のドアは木造引き戸。

売っているものは、駄菓子屋としては、飴玉、ガム、キャラメルの類。
文房具は、鉛筆、消しゴム、シャープペンシル、定規、クレヨン。漫画本もあったように思う。

値が張るものは一切ない。

店主は、年齢から察するに、この世の人ではない。店舗建物はなく、跡地らしき場所には、別の建物が立っている。
既に、時代は大量生産、薄利多売の時代、小学校前の4畳半、老夫婦が経営する日本昔話みたいな店は、ビジネスモデル的に成立するはずもない。
我々は、温かなものを捨てて、社会的合理性を選んだのだ。

ただ、小学校を訪れたた際、どの場所であったか、正確に想い出せないものの、その駄菓子屋兼文房具店のことが気になって仕方がない。

始業時間になると、毎日のように、おばあさんが、何気なく、店先の外で、通りを眺め、信号機を渡る子供たちの姿を後ろから見つめているような気がするのである。