小さい頃、小児マヒが流行していた関係で、ちょっとでも高熱を出すと、大きな病院にバスに乗って連れていかれた。
その病院は、衛生が行き届いた病院だった。入口に白い服を着た下足番のオバさんが2人いた。
その横に、受付係が2人いて、その奥に会計窓口があった。
薬局は、通路を挟んで受付と会計の反対側にあった。
薬剤師は、いつも秤で薬の分量をはかり薬を調合していた。
小児科は、1階の一番奥にあった。
私は、しょっちゅう風邪をひいた関係で小児科の常連だったので、先生の顔と名前と体の特徴はよく覚えていた。話しぶりまで覚えていた。
先生の名は品田だった。
品田先生は、母がどんなな言い方をしても、いつもにこやかだった。
世の中にこんな人はいないのではないかと思うくらい、いつも穏やかだった。
私は、先生に挨拶すると診察が始まり、先生は
必ず、聴診器を私の胸と背中にあて、お腹を触診した。
そして、医者になるんだったら品田先生のような先生になろうと、小さいながらも思った。
もう、この場所に病院はない。
4歳くらいの頃、ただ一度一緒に遊んだ、幼なじみを小児科の待合室で何度も見かけたような気がしてならないのだ。