遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

伯母の想い出

母には数歳年上の姉がいた。母が言うには、姉は自分よりも美人で達筆、軍人さんに大変もてた
といつも私に語った。

母は伯母と話す時はいつも楽しそうだった。伯母も母には何でも正直に語り、話が尽きることはなかった。

 

ただ、親戚の間では、伯母は、不平不満話が多く、扱いにくい人という評判だった。農家に嫁いだためか苦労話が多かった。

 

母が他界した年、伯母の自宅に立ち寄った。伯母の家は、コンバインで稲刈りの真っ最中。日没まで家族総出で農作業が続いていた。

 

 

私は、旦那さんと一緒に農作業する伯母の顔を見て驚いた。苦労しているにしてはとても満足そうなのである。いつも不平不満話をする伯母とは別人の人がそこにいた。

 

それから30年後、伯母は認知症になったが、男気ある旦那さんは、自分で介護すると宣言。伝え聞いた、息子さんがUターン就職、両親の介護をすることとなった。

旦那さんは、戦時中、帝国陸軍の要職だった方。人望厚く、部下に慕われた方と葬式にて伺った。

 

その後、伯母と、会うことはない。在命中であれば施設に居られるはず。
ただ、家族総出の農作業で幸せそうに働く伯母の姿は、母と話し込む時の不機嫌な様子と余りに対照的だったこともあり、脳裏から離れることはない。