当時好きだった女の子が信仰していた。彼女の信仰は、聖書中心主義に近く、彼女は他の宗派の人たちよりも純粋かつ敬虔な信徒に見えた。
対照的に私は、研究社の英和中辞典を思考訓練の場と割り切り、擦り切れるほど読んでいた。彼女から見て、私が読んでいるものは邪教の本のように見えたはずである。
彼女はどんどん信仰の深みにはまっていった。
彼女が日に日に遠い存在になっていくような気がした。
目の前で話していても、彼女のこころには厳重に鍵がかけられ、言葉やこころが届かない相手と会話しているような気になった。
破局は時間の問題だった。
私は彼女を選んだことを後悔したが、彼女の記憶を消し去る方法が思い浮かばなかった。