遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

紀伊国屋書店に本を買いに出かけた想い出

中学時代好きだった女の子が居た。高校入学後は離れ離れになった。彼女が札幌の高校に進学したこと以外、彼女のことは何も知らなかった。

私は精神的に不調状態にあった。自分から彼女を探そうという気にもならなかった。彼女の友達が見るに見かね、彼女に連絡したのか、一通の手紙が私に届いた。手紙には、引き続き私からの手紙が欲しいと書いてあった。
しかし、それを素直に喜んでいていいのかどうかわからず、翌年の6月、彼女に会うべく口実を一つ見つけた。
それは、札幌の大通、有楽ビルに開店した紀伊国屋書店に数学の本を買いにいくことだった。その本は、同級生が、勉強の合間に思考訓練用としている、大学教養レベルの本だった。
乗り物はバスを選んだ。本屋が大通りにある関係で列車で降りてから歩くのが面倒だったこと、1条7丁目のバスターミナルから乗れる便利さもあった。
中央バスターミナル2016.jpg
国道12号線経由片道4時間近くかかったように思う。
終点で下車し、周りが見たこともない風景だらけで、一瞬、方向がわからなくなり焦った。ちょうど正午前後だった関係で、気持ちを取り直し紀伊国屋書店があるビルを見つけ、探していた本を買うことができた。
ビルの下の喫茶店みたいなところで昼食をとり、あたりの公園を散策した後、家路についた。
彼女とは連絡はつかず、彼女の本心はわからないままだった。彼女は自分で自分の心に鍵をかけているようだった。

この一件がきっかけとなり、近い将来、困ったことが起きることを予感したのだった。