そのサクランボの木は
ある女の子の家に行く途中にある
私は
バスを降り
碁盤の目の区画を
一つ一つ通り過ぎた
サクランボの木は
北西角地にあった
当時は、木造二階建てのトタン屋根の家が
あった
最近、家は取り壊され
サクランボの木が残された
廻りは何もないので、毎年大きくなっていく
いつのまにか
果樹園にあるのと同じくらい
たわわな実をつけている
その恋はかなわなかった
すれ違いが多すぎ
私が去ることで
静かに終わりとしたのだ
その女の子の家には
再び行くことはない
が
用事のついでに
通り過ぎた際に
見かける
そのサクランボの木は
あの時も
そして今も
見守り続けているような気がするのである