遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

春の日の午後の想い出

ある春の日の午後
百メールほど先を歩いていた人に
遠い昔に見た
シルエットを見つけた

私は、その姿を追いかけた

その人は信号機の所で左に曲がり
かなりの速足で駅に向かった

駅の区画に入ったところで
ゆったりした歩きぶりに変わった

後ろ姿
上半身の姿勢
腕の振り
視線
歩幅
スカートの丈
から
忘れ得ぬ人であることを確信した

私は、その昔したように
追い越し
その人が
券売機で特急券を買い
汽車に乗るのを見送った

そして想い出が一つ残った