遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

ふるさとの冬景色

ある晴れた朝
私は、雪景色に染まった遠い山並みを眺めた

山並みは昔のままだった
丘も川面も昔のままだった

あたり一帯は
魔法にかかったように
時が進むのをやめたようだった

私にとって
ダイヤモンドダスト
氷菓のように舞った雪も
しもやけ気味の掌で融けた雪の華
言葉以上の意味を持っていた

17歳のあの冬に起きたこと
34歳のあの冬に起きたこと

それらは、決して偶然ではない

すべては、予定され
関連付けられた結果なのだ

私は、すべてを受け入れるしかない

そう
人生は
主役も観客もたった一人の
時として悲しい舞台なのだ

私は
失った記憶を
ひとつひとつ辿り
託されたぬくもりを確かめるように
寂寥の冬を
生きている

今こうして生きているのは
母が手塩にかけて用意した
希望に満ちた時代を過ごした
おかげなのだろう

私は、たぶん
託された希望によって
生かされているのだろう