振り返ってみて、私は、あの人の気持ちをいつも裏切り続けていたような気がしている。
何度も機会はあった。
きちんと向かい合って、付き合えたはずだったが
私には、あの人の存在は重すぎた。
高嶺の花だった。
そして、
4歳のときに初めて出会い
あの人があの場所で私の手を引き
一緒に遊んだ想い出だけは、どうしても残したかった。
私は、あの人の想いを何度も裏切った。
あの日も
そして別のあの日も
私は、あの人だとわかっていても
何もできなかった。
不甲斐ない私ではあるが、
今、振り返って、あの人の一途な気持ちを音楽にたとえると
マーラー交響曲第五番 第四楽章
が当てはまるような気がしている。
他の良縁に
一切見向きせず
一途に自分の想いに従い
途切れることなく
どこまでも深い絆に満ち
この曲のような
冷めることがない情熱を
今も持ち続けていることに
私は応えるすべがない。
ただ、私は、この曲を想い出したように聴き続けることで、
あの人の内なる情熱の深さに
漸く気づきつつあるのかもしれない。