遠い夜空のオリオン

幼馴染との淡い想い出を綴る私家版郷土史

覚悟を迫る一途な恋

私は、オフイスラブはしない主義だが、この人なら仕方あるまいと覚悟を決めたことが一度あった。

その人は、私にとって理想のタイプだった。だが、事情があり、彼女への想いを一切断ち切り、努めて悟られぬように装った。
あるとき、私は、彼女と、あることで口論になった。彼女の様子がいつもと違い、変だったことに気づいてはいたが、なおも私は、無関心を続けた。
それから、彼女は、ある人と交際を始めたが、彼女の事情で破局を迎えたことを知った。また、多くの同僚が彼女を口説こうとした。だが、そのどれもが失敗に終わったようだった。
その後、どういう風の吹き回しか、彼女は、私の悪友たちに宴会などで積極的に話しかけ、開放的な態度を示すようになった。私と悪友数人で酒を飲んだときなど、悪友たちは彼女の美貌と女っぷりの良さに虜になり、話題の中心になったことが何回か続いたが、私はそれでも人事のような態度を続けた。
それから、私は何度か転勤し、その度に彼女がいる事業所に舞い戻った。
私は、相変わらず無表情のままだった。が、彼女は私から目をそらすことはなかった。
彼女の方は会うたびに、私をじっと見つめ、それが挨拶に変わり、次第に挑発的なものに変わっていった。が、それでも私は無表情を続けた。

それから、半年後、私は、無視することをやめ、実行に移した。

それは、今までと逆に生きることを決心したことに伴う、一種の衝動だった。