私は、ただ一人の女性だけは、出会った瞬間からイイ女だと思っていた。
その女性は、会社帰りに、デパート地下の食品売り場で買い物をして帰る習慣があった。
ある日、デパートお菓子売り場でチョコレートを眺めていたところ、彼女が、和菓子コーナーにいる彼女を発見した。
OLらしい黒っぽい灰色のストライプのスーツ姿だった。
後姿がしなやかで、今までに見せたことがないくらい、いきいきとしたしぐさだった。
私は、この瞬間をずっと記憶したい衝動に駆られた。
が、しかし、私が一瞬目を離した隙に、彼女はその売り場から去っていってしまった。
その後、私は彼女と話す機会はないが、たぶん、この瞬間だけは忘れることはないだろうと思った。